瞑想法で得られる効果とその原理について|マインドフルネス
瞑想法の大まかな分類とそのやり方
瞑想は合計500種類以上もあると言われていますが、大きく分けて以下の2つに分類することができます。
- 観察する瞑想法
- 特定の対象(特に思考や感情)に心を集中する瞑想法
それぞれの瞑想法でやり方が大きく異なるため、身体に及ぼす影響も得られる効果も違うことが分かっています。
1. 観察する瞑想法
代表的な瞑想法の中ではマインドフルネス瞑想やヴィパッサナー瞑想がこれに該当します。
ヴィパッサナー瞑想から宗教色を取り除いたものがマインドフルネス瞑想です。
(正確に述べるとマインドフルネス瞑想は①と②の良いとこどりをしたものなので②の要素も含みます。)
マインドフルネス瞑想やヴィパッサナー瞑想は、自分の身体感覚や思考に注意を向け観察する瞑想法であり、自分の状態に対する認識力を鍛えることができます。
マインドフルネス瞑想では、一般的に浮かび上がってきた思考や全身の感覚を観察することで練習を積みます。
この練習では評価や判断をせずにただありのままに感覚を感じている自分を経験することが重要です。
この訓練を積むことにより普段から自分の意識を今の現実に敏感に保てるようになるとされています。
2. 特定の対象(特に思考や感情)に心を集中する瞑想法
代表的なものとしてサマタ瞑想や慈悲の瞑想が挙げられます。
サマタ瞑想は一つの対象に心を落ち着かせた状態、つまり集中した状態を作る瞑想法です。
狭義では静かな澄み切った心の状態を維持する瞑想法(元々の仏教での修行法)のみをサマタ瞑想と呼びますが、広義では仕事などで一つの物事に没頭している状態を含むこともあります。
狭義の意味のサマタ瞑想は呼吸やロウソクの火などといった何か一点に集中することで行います。
広義の意味では日々の日常生活で意識的に集中することで鍛えることができます。
慈悲の瞑想は生きとし生けるものが幸せであることを願う精神を育む瞑想法であり、自分に対して慈愛の気持ちを念じ続け、自分から知人、知人から最終的には生きとし生けるものへと段々とその対象を広げていくことで行います。
瞑想法で得られる効果とその原理
前回の記事では瞑想が脳の神経回路に影響を及ぼすことによって脳の機能を高めることを示しました。
この神経回路の変化は多くの研究では簡易的に脳波として測定されており、それぞれの瞑想法によって発生する脳波のHzとその発生部位が異なること、またそれによって得られる効果が違うことが明らかとなっています。
まず前提として、生きている人の脳は常に活動しており、脳波が発生しています。
脳波はHzの違いで分類されており、デルタ波(1−3 Hz)、シータ波(4−7 Hz)、アルファ波(8−13 Hz)、ベータ波(14−29 Hz)、ガンマ波(30− Hz)に分類されています。
デルタ波は深い睡眠時に、シータ波は浅い睡眠時に後頭部及び側頭部に発生します。
目を閉じた時やリラックス時には特に後頭部においてアルファ波が優位となります。
日中の活動時(思考している時など)の脳は覚醒しており、前頭部や中心部においてベータ波が優位になります。
この際にガンマ波も発生します。
以上を大雑把に整理すると、覚醒度が高くなるにつれて高いHzの脳波が発生すると言えます。
こうした脳波は脳の機能と密接に関わっており、例えばガンマ波が発生することで脳の実行機能が働くことが分かっています。
(具体的に述べると、脳の異なった領域でガンマ波が同期するとその領域間の情報が統合されるため、海馬とそれ以外の領域がガンマ波で同期することで海馬の記憶情報を利用できるようになる。)
ここで重要なのが、瞑想はそれぞれのやり方によって発生する脳波の種類と発生部位が異なるということです。
そのため、瞑想法の違いによって得られる効果が大きく異なることが分かっています。
例えば、観察するマインドフルネス瞑想をすると前頭部にリラックス時に発生するアルファ波や浅い睡眠時に発生するシータ波が発生することが分かっています。
このことから、マインドフルネス瞑想はリラックス状態を導き疲労した脳を休ませる効果があると言えます。
マインドフルネス瞑想は他にも不安感や抑うつ感の減少に優位に役立つことが多くの臨床研究により示されているため、脳が疲れている自覚がある人や精神面に課題がある人はマインドフルネス瞑想を取り入れることをお勧めします。
また、特定の対象(思考や感情)に心を集中する瞑想をすると、意識的な活動をする際に発生するベータ波とガンマ波が強く発生することが分かっています。
特にガンマ波は記憶を意識的な行動へと活用する際に重要であることが分かっており、集中瞑想をすることで脳の覚醒度を高め実行機能を向上させることが期待できます。
そのため、生産性を高めたい人は集中瞑想を習慣的に取り入れると良いと言えます。
参考文献
- Common and distinct lateralised patterns of neural coupling during focused attention, open monitoring and loving kindness meditation
- Focused attention, open monitoring and automatic self-transcending: Categories to organize meditations from Vedic, Buddhist and Chinese traditions
- 海馬-嗅内皮質間の同期性は記憶を意識的な行動へ変換する過程に重要-「メタ認知」を支える神経回路メカニズムをマウスで立証-
- マインドフルネスストレス低減法(著者:ジョン・カバットジン/出版社 : 北大路書房/発売日 : 2007/9/5)
- サーチ・インサイド・ユアセルフ――仕事と人生を飛躍させるグーグルのマインドフルネス実践法(著者:チャディー・メン・タン/出版社 : 英治出版/発売日 : 2016/5/17)