瞑想が人体におよぼず影響とその効果
瞑想とは何か
瞑想の定義は様々ありますが、神経学者のルイスらは瞑想を「実践者を特別な種類の心のプロセスに馴染ませるようにデザインされた一群の心のトレーニング活動」と定義しています。
この定義によると瞑想は心のトレーニング活動であり、合計500種類以上も存在すると言われています。
代表的なものとして、マインドフルネス瞑想、ヴィパッサナー瞑想、サマタ瞑想、慈悲の瞑想が挙げられます。
瞑想は怪しいイメージを持たれやすいですが、厚生労働省は推進事業のHPにおいて瞑想の安全性は高いという見解を示しております。
瞑想が人体に及ぼす影響
結論を述べると、瞑想により脳の神経回路の状態が物理的に変化し、それに伴って意識活動(心の状態)が変化します。
神経回路の変化
脳の神経回路は固定的なものではなく常時変化をしています。
これは脳科学・神経学の両分野において神経可塑性と呼ばれ、科学的事実とされています。
人は生まれてから新しい物事を覚えたりスポーツ等で運動技術が向上したりしますが、これは脳の神経回路が増えたり伝達効率が向上するためです。
神経回路の変化の基本原則として、ある神経回路を使用すればその神経回路の繋がりは強くなり、使用しないと弱くなっていきます。
この神経回路の変化は意識的な活動(心の活動)によっても物理的に変化し、例えば「あの人が好きだな」と思うだけでそれに対応する神経回路(シナプスの繋がり)が使用され、強化されます。
意識活動の発生は脳の神経回路によって大きく影響を受ける
ここで大事なのが、私たちの感情や思考などの意識活動の発生は脳の神経回路によって大きく影響を受けるということです。
具体的に言うと、「あの人が好きだな」という意識が発生しやすいかどうかは現在の神経回路の状態に大きな影響を受け、現在の神経回路はそれまでの人生の意識経験の積み重ねによって決定されます。
つまり、「あの人が好きだな」と1回でも思うとその神経回路が強化され、その神経回路が将来的に繋がりやすくなります。
神経回路が繋がりやすくなるということはその意識が発生しやすくなるということを意味しており、「あの人が好きだな」と思うと今後「あの人が好きだな」という思考・感情が生まれる確率が高くなります。
脳の神経回路と意識活動は相互作用
このように、脳の神経回路と意識活動(心の状態)は相互作用しており、意識活動が脳の神経回路を物理的に変え、物理的に変化した神経回路はその後の意識活動に影響を及ぼします。
そのため、瞑想を行い特定の心の状態を長く維持すると、その心の状態に対応した神経回路が強化され、その後の心の状態に変化をもたらすと言えます。
細胞数の増加や神経伝達効率の向上
実際に数多くの研究により、瞑想によって主観的な幸福感が増大すること、つまり心の状態が変化することが確認されており、また瞑想によって様々な脳波が発生し、それに伴って前頭前皮質や島皮質の厚みの増加(細胞数の増加)や神経伝達効率の向上が見られることが示されています。
瞑想の効果
瞑想による効果は様々なものがあります。
精神面に有益
瞑想は特に精神面に非常に有益であり、瞑想が不安や抑うつ感を優位に減少させることが研究により明らかとなっています。
これは医学的にも認められており、実際に精神医療の現場でマインドフルネス認知療法(MBCT)と呼ばれる瞑想を軸にした心理療法が広く活用されています。
MBCTでは一日に45分間~1時間、週に6回の瞑想トレーニングを8週間に渡って行います。
身体的なストレス反応を抑制
また精神面だけでなく、瞑想が身体的なストレス反応を抑制し、それに伴って身体にも良い影響をもたらすことが確認されています。
慢性的なストレス状態にあると交感神経が優位な状態が続き、免疫機能の低下、血圧の上昇など身体に様々な悪影響が生じます。
心因性の不眠の治療
瞑想は過剰に興奮している交感神経を抑制することができるため、心因性の不眠の治療などに用いられています。
これは睡眠時に交感神経が高いと睡眠の質が低下するため、瞑想によって交感神経を抑制することで不眠を解消させるというメカニズムです。
がんや慢性皮膚病、過敏性腸症候群の改善
他にも、ストレスが過剰になると免疫機能が低下することから、がんや慢性皮膚病、過敏性腸症候群の改善に瞑想が有効であるという研究結果もあります。
日々のパフォーマンスを向上
また瞑想の効果として、日々のパフォーマンスを向上することが明らかとなっています。
感情のコントロールなどといった感情調整能力だけではなく、注意力や集中力を含めた自己コントロール機能全般が高まります。
さらに、瞑想によって創造性が高まることも示唆されています。
まとめ
いかがだったでしょうか。
このように瞑想には様々なメリットがあると言えます。
ぜひこの機会に一度やってみてはいかがでしょうか。
参考文献
- eJIME 厚生労働省『「統合医療」に係る情報発信等推進事業』
- マインドフルネスストレス低減法(著者:ジョン・カバットジン/出版社 : 北大路書房/発売日 : 2007/9/5)
- サーチ・インサイド・ユアセルフ――仕事と人生を飛躍させるグーグルのマインドフルネス実践法(著者:チャディー・メン・タン/出版社 : 英治出版/発売日 : 2016/5/17)
- 自分でできるマインドフルネス:安らぎへと導かれる8週間のプログラム(著者:マーク・ウィリアムズ/出版社 : 創元社/発売日 : 2016/7/16)