睡眠の仕組みから考えた睡眠を良くする11個の対策
ヒトは何のために睡眠を取るのか
睡眠には身体の疲れを取るための行動という認識の人がいると思います。
もちろん身体を休ませるためでもあるのですが、脳を休ませるという大切な役割もあります。脳は、重さは体重の2 ~ 5%に過ぎないのですが、消費エネルギーは全体の20%以上になるとも言われています。
脳はヒトが活動していく上で常に働く重要な臓器なので、そんな脳を休ませるのに必要不可欠なのが睡眠という行為なのです。
なぜヒトは眠くなるのか
ヒトは、「ホメオスタシス」と「サーカディアンリズム」という2つの仕組みで睡眠をコントロールしています。
ホメオスタシス(恒常性維持機構)
ホメオスタシスは、外的・内的な環境の変化にも関わらず、体温や血糖値、血液などの生理状態を一定に保とうとする働きのことです。
睡眠に関していえば、覚醒中に脳の疲労蓄積により睡眠中枢に働きかけて眠気を誘発します。
「疲れたら眠る」がそれにあたり、目覚めている時間が長いほど強くなります。
サーカディアンリズム(体内時計機構)
サーカディアンリズムは、身体の生体リズムを調整する機能です。
日本語で「概日リズム」と呼ばれ、体内時計と呼ばれる人が生まれながらにしてもっている身体リズムの中で、約24 時間を周期とする内因性のリズムのことです。
疲れに関係なく、暗くなると自動的に睡眠ホルモンとも呼ばれるメラトニンが体内時計に働きかけて眠気を誘発します。
睡眠の種類はレム睡眠、ノンレム睡眠の2つ
睡眠の種類は、レム睡眠、ノンレム睡眠の2種類があります。
レム睡眠
レム睡眠中は目がぴくぴく活発に動く、Rapid Eye Movement(急速眼球運動)があることからREM(レム)睡眠と呼ばれています。
脳が活発に働いており、記憶の整理や定着が行われています。
睡眠脳波から判別され、急速眼球運動以外にも、骨格筋活動の低下を特徴とします。
また、レム睡眠中に夢をよく見ます。
ノンレム睡眠
REMのないノンレム(non-REM)睡眠では、脳代謝量が低下し、脳温も下がり休息状態となります。
入眠後の深い睡眠時には成長ホルモンが分泌されることから、ノンレム睡眠時には能動的に組織の増殖や損傷に対する修復をはかっていると考えられます。
入眠がしやすくなる5個の対策
メラトニンの分泌や深部体温を下げやすくすることで、入眠をしやすくし、睡眠の質を上げることができます。
1. 入浴は就寝2時間前までに済ませる
深部体温が下がり始めると、睡眠が誘発されます。
そのため、睡眠開始時に下げやすくするために深部体温を上げることで、入眠しやすく、睡眠の質が向上します。
2. 眠る前に軽くストレッチをする
体の血液循環を良くするストレッチは、深部体温をスムーズ下げる効果があります。また筋肉の緊張をほぐす効果もあるので、体がリラックスして、深い眠りにつきやすくなります。
3. 朝日を浴びる時間を一定にする
光を浴びることで脳内でメラトニンの材料であるセロトニンの分泌が活発になります。
昼間しっかりセロトニンの分泌をすることで、夜にメラトニンの分泌量が上昇し始めて眠くなります。
朝、光を浴びる時刻が、その日の眠りの時刻を決める要因となっています。
4. 睡眠リズムを一定にする
メラトニンの分泌は、起床時からおよそ14~16時間ほどで始まり、その2時間後に最大に達するとされています。
例えば午前8時に起床した場合、メラトニンの分泌量は午後12時頃に最大に達しますので、この時に眠り始めるとスムーズに入眠できます。
5. アルコール・カフェインの摂取を控える
眠る時に必要な副交感神経の働きを鈍くするカフェインや、アルコールを分解するためにアセトアルデヒドが発生するアルコール類を飲むことは控えることで入眠をしやすくできます。
五感から考えた6個の対策
今度は、五感に紐付いた対策を紹介します。
6. 【視覚】眠る前のスマホ操作を控える
スマホやパソコンなどの電子機器が放つブルーライトは太陽の光に近い性質のため、脳が時間を誤認識して、メラトニンの分泌に影響し、覚醒してしまうことがあります。
また、明るすぎる照明にも気をつけてください。
7. 【聴覚】自然に近い音楽を聞く
人の活動時の脳波はβ波と言われていて、リラックスして眠りにつくときはα波に切り替わります。この切り替えを音楽(音)によってスムーズに行い、眠りにつきやすくします。
自然に近い音といえば、ホワイトノイズという「サー」という静かな雨のような雑音で、「あらゆる周波数成分を一様に含む音」とのことを示します。
youtubeや音楽アプリで調べて聞きながら睡眠をとってみてください。
8. 【臭覚】アロマオイルを使う
五感の中で最も快眠効果が出やすいのが嗅覚だと言われています。
嗅覚は他の4 つとは違う伝達路を持っていて、脳内にある視床下部という場所に直接刺激を与えることができるからです。
視床下部は睡眠に深く関係する自律神経やホルモンをコントロールしているので、ぜひ鎮静作用のあるラベンダーやカモミールなどの香りを試してみてください。
9. 【味覚】夕食は寝る3〜4時間前までに取る
胃の中に食べ物が残っている状態だと、胃腸が消化のために働き続けてしまうため、「ノンレム睡眠」に入りづらくなってしまいます。
10. 【味覚】必須アミノ酸の「トリプトファン」と非必須アミノ酸の「グリシン」の摂取
肉類・魚類・豆類・乳製品に含まれる必須アミノ酸の「トリプトファン」と魚介類に多く含まれる非必須アミノ酸の「グリシン」は快眠に欠かせない栄養素です。
前者はメラトニンの正常な分泌を促すセロトニンの原料になり、後者は体温を低下させて自然な入眠をサポートをしてくれます。
11. 【触覚】ツボを押してみる
快眠に効くツボは、その名も「安眠」と「失眠」です。「失眠」は、かかとの真ん中にあるので少し強めの力でゴリゴリとほぐし、「安眠」は耳の後ろにある骨から指1本分下にあるので、交互に刺激してみてください。
まとめ
睡眠のメカニズムから考えて理解することで、対策する際になんとなくよく聞くからなんとなくやってたというヒトも、間違いなく行えると思います。
ヒトにとって睡眠は欠かせないものなので、一つ一つの睡眠の質を高めて、パフォーマンスを向上させてみてください。
【おまけ】消費カロリーと睡眠の関係
睡眠はすべての動物種でみられますが、睡眠の長さはさまざまです。一般的にコウモリやネズミなど運動量が多く、体重当たりの消費カロリー数が大きい動物種ほど睡眠時間が長い傾向があります。
すなわち睡眠は覚醒中に蓄積した疲労を回復すると同時に、エネルギーを節約するための最も効率の良い休養のあり方であるといえます。
ヒトも成長とともに体重当たりの消費カロリーが減少します。
睡眠時間、特に深い睡眠が年齢とともに減るのは理に適ったことであるともいえます。
参考資料
睡眠のメカニズムに関する参考記事
睡眠の種類に関する参考記事
睡眠時に聞く音楽に関する参考記事
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