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リモートワークが人の健康と生産性に及ぼす影響

リモートワークが人の健康と生産性に及ぼす影響
2021年2月21日
コロナの影響でリモートワークの機会が増えている方も多いのではないでしょうか? 今回の記事ではまず初めにリモートワークが人の健康と生産性に及ぼす影響について述べ、最後に会社にリモートワークを導入する際の注意点について解説しています。

リモートワークが人の健康に及ぼす影響

1.人との関係が希薄になる

リモートワークではコミュニケーションの機会が減るだけではなく、コミュニケーション体験の質も下がります(直接のやり取りからテキストメッセージを主体としたやり取り等への移行など)。
そのため、人間関係が希薄化する危険性があります。
社会心理学によると人は社会的動物であり、生きるために人と人の関わりが必要だとされています。
適度に人と接することは健全な精神の維持に有益であり、実際に人と接すると脳内に精神安定物質であるセロトニンやオキシトシンが分泌されることが分かっています。
そのため、会社以外にコミュニティーが無い人(一人暮らしで家族がいない、友人との接点が少ない等)の場合リモートワークに切り替わると人との関わりが不十分になる可能性があり、精神面に悪影響が生じる危険性があります。
一方、人との関わりが健康に悪影響を及ぼす場合もあります。これは嫌な人と接すると脳の視床下部-下垂体-副腎系(HPA系)を中心としたストレス反応システムが人体で過剰に生じるためです。慢性的にHPA系が過剰になると人体に様々な問題が生じます。
そのため、社内の人間関係が大きなストレスになっている人の場合はリモートワークに切り替わることで心理的なストレスが減り健康にプラスの影響を及ぼす可能性もあります。

2.代謝が乱れる

人類は今までの長い進化の期間(チンパンジーの祖先と別れたのは600-700万年前)ずっと外で生活しており、人体は生物学的観点から述べると日光を浴びることを前提した構造になっています。
具体的に述べると、人の体内時計は毎日数十分遅れており、この乱れを午前中に強めの光を浴びてリセットする必要があります。
室内の明るさは大体800ルクス以下なのに対し、晴れた日の明るさは数万ルクス、曇りだとしても5000ルクスに達します。
そのため、ずっと室内にいるリモートワークだと午前中に浴びる日光の量が不足する危険性があります。
人体では様々な化学反応が適切なタイミングで働いており、一つでも大きく乱れると連鎖的にずれが生じます。
代謝が乱れると様々な健康問題が生じるため午前中に日光を浴びて体内時計を整えることは非常に重要だと言えます。

リモートワークが生産性に及ぼす影響

1.個人への影響

リモートワークに関する多くの研究により、適切な在宅勤務は労働生産性を向上させることが分かっています。
この理由は大きく分けて2つあり、一つは在宅勤務が生活満足度を高めるためです。
リモートワークにより通勤時間が削減されると生活満足度が大きく向上し、生活満足度が向上すると仕事の生産性が向上します。
もう一つは作業中に話しかけられることが減るためです。
特に管理職などのように話しかけられる機会が多い人にとって、適度なリモートワークは効果的であることが分かっています。
リモートワークで生産性が高まる人の傾向として、自発的であること、自己規律性が高いこと、人との交渉力があることが指摘されています。

2.会社全体への影響

上記のように、リモートワークは個人の生産性を高めることが分かっています。
しかし、人と人との連携が減ることから全体としての生産性が高くなるかどうかは一概には何とも言えません。
リモートワークはまだ導入が始まったばかりであるため、導入した会社の業績が上がるかどうかの長期的な観察研究はありませんが、Vodafoneの調査によるとリモートワークなどの在宅勤務を導入した会社の83%が生産性の向上を報告しているそうです。
そのため、上手く導入できれば会社全体的としても利益になる可能性があると言えます。
また、転職理由の54%はワークライフバランスの改善なので、リモートワークなどの柔軟な働き方を増やすことで退職率を下げ、さらには会社への採用応募率を高めることも期待できます。

会社にリモートワークを導入する際の注意点

上記のように、リモートワークは個人の生産性を高め、会社に様々な利益をもたらす可能性があります。
しかし、リモートワークは注意深く管理することが重要であると報告されています。

大学の研究室にリモートワークを導入した実験によると、全体の中で少ない割合がリモートワークをしている形(多くが出勤し、毎日数人が入れ替わってリモートワークをしている形)だと問題が発生しない一方で、高い割合(全体の中で数人しか出勤しない)になるとプロジェクトやチームが崩壊しやすくなる傾向があることが報告されています。

これはリモートワークだと日常のコミュニケーションが無くなり、それによってプロジェクトに関する事務的な会話も減る傾向があるためです。
日常のコミュニケーションが減れば相手に対する心理的安全性が減り、プロジェクトに関する些細な事柄で連絡がし辛くなります。
その状態になるとプロジェクトが上手くいかなくなるリスクが上がり、その結果さらに人間関係が悪化するといった負のスパイラルに陥る可能性があります。

そのため、今のコロナ下のようなフルリモートが主軸となっている状態では密接にコミュニケーションを取ることが非常に重要であると言えます。

参考文献