サプリメントの健康への影響について|問題点、効果
サプリメントとは何か
サプリメントには法令上の明確な定義がありません。
厚生労働省では便宜的に「特定成分が凝縮された錠剤やカプセル形態の製品」と定義していて、健康食品とは分けています。
サプリメントは主に天然原料を化学的に抽出・精製・濃縮することで作られていますが、医薬品のような徹底した製造管理がされていないのが現状です。
サプリメントには効果があるのか
合計50万人にも及ぶマルチビタミンサプリメントの有効性に対するメタ分析(27件の既往研究を対象)では、有効性は一切なく逆に明らかに人体に悪影響を及ぼすと結論づけています。
ミネラルのサプリメントに関しても同様で、主要な慢性疾患の羅漢率や死亡率の低下には寄与しないことが分かっています。
また、オメガ3脂肪酸を含む食品を食べると心血管疾患リスクが低下することが知られていますが、オメガ3脂肪酸サプリメントの心血管疾患リスクへの有効性に対する10件のメタ分析(約8万人を対象)では有意な関連は見られないと結論づけています。
サプリメントを飲む人は健康?
「サプリメントを飲む人は比較的健康である」という観察的な疫学研究もあるにはあるのですが、こういった研究はサプリメントを飲む人と健康の良さに相関があることを示しているだけにすぎず、サプリメントを飲むから健康に良いという因果関係を示しているものではありません。
実際に、これらの研究の多くはサプリメントを摂取しようとする人は一般的に健康志向であることを考慮から外していることが多く、健康志向な人の傾向(裕福で学歴が高く、運動を定期的に行い、痩せており、食事に気を使い、お酒を摂取しない)の項目の影響を無視できるようにした分析結果ではサプリメントの効果は認められていません。
サプリメントには効果があると宣伝しているものの多くはサプリメントを販売することで利益を得ている企業自体が行った実験データを都合良く解釈していることが多く、主観的なバイアスが多く含まれていることに注意が必要です。
ビタミンやミネラルの欠乏症の予防効果
例外的にサプリメントの有効性が認められているものとして、ビタミンやミネラルの欠乏症の予防効果が挙げられます。
そのため、偏った食生活を送っている際に補助的に飲むケースでは有効な可能性があると言えます。
ただ、通常の人がきちんとした食生活を行っていればビタミンやミネラルを欠乏することはまずありません。
現代の科学的に正しいとされている食生活に関しては以前の記事で解説していますのでぜひご確認ください。
サプリメント単体だと効果が無いものがある?
野菜を食べると発がんのリスクが低下することが知られており、これにはビタミンEやベータカロテンの抗酸化作用が大きな役割を果たしているからだと解明されています。
しかし、ベータカロテンのサプリメントを人に投与すると逆に肺がんのリスクが若干増加すること、ビタミンEのサプリメントを取りすぎると逆に死亡率が増加することが研究によって明らかとされています。
また上でも記述しましたが、オメガ3脂肪酸を含む食品を食べると心血管疾患リスクが低下するのに対し、サプリメントで摂取しても効果が無いことが示されています。
このように、健康に有益であると特定されている栄養素をサプリメントのように単一で服用しても効果が発揮されなく、むしろ人体に悪影響を及ぼす可能性があることが分かっています。
この理由として、サプリメントは単一の化学物質が単一の形態で高濃度に纏まっていることが挙げられます。
サプリメントとは違い食物には無数の栄養素が様々な形態で含まれており、これらが人体の各所で複雑に絡み合って化学反応することで消化・吸収されています。
栄養とは無数の化学物質が無数の状況下で複雑に作用しあって初めて作用するものであり、単一の化学物質が単一の形態で濃縮されたサプリメントでは食品と同じような効果を期待することは難しいと言えます。
他の理由として、サプリメントでは通常食品から摂取するような形態の化学物質になっていない可能性が挙げられます。
同じ元素を構成する化合物には複数種類ありますが、サプリメントでは工場で安価に製造しやすい形態の化学物質になる傾向があります。
そのため、同じ元素が含まれているとしても通常食品から摂取しないような化学物質や構造になっている可能性があり、もしそうであれば体における反応が大きく異なります。
この影響によってサプリメントが腸内細菌や人体の代謝のバランスを崩している可能性が指摘されています。
健康のためには正しい食生活をすることが重要
ビタミン欠乏症等の何らかの欠乏症がある場合や、妊婦(葉酸の必要量が通常時の2倍以上)や高齢者のように需要を満たす摂取ができない場合は補助的な服用ならメリットがあります。
また不健康な食生活をしていて明らかに栄養素が不足している場合も取らないよりは良いと言えるが、確実に食物から摂取する方が良いと言えます。
通常の人(多少の栄養の乱れがある方も含む)はサプリメントを取っても健康への良い影響はプラシーボ効果以外特に無く、むしろ代謝を攪乱しネガティブな影響を引き起こす可能性の方が高いことがあります。
野菜を取らずにビタミンやミネラルをサプリメントで賄おうとする戦略は逆効果になる可能性があり、健康のためには正しい食生活をすることが重要であると言えます。
参考文献
- Efficacy of vitamin and antioxidant supplements in prevention of cardiovascular disease: systematic review and meta-analysis of randomised controlled trials
- Effects of vitamin D supplements on bone mineral density: a systematic review and meta-analysis
- Vitamin and Mineral Supplements: Do We Really Need Them?
- Associations of Omega-3 Fatty Acid Supplement Use With Cardiovascular Disease Risks