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有酸素運動が身体に及ぼす影響とメリット、デメリットについて

有酸素運動が身体に及ぼす影響とメリット、デメリットについて
2020年11月6日
有酸素運動は健康に良いと言われますが、なぜ健康に良いのか、知っている人は多くないのではないでしょうか? 今回の記事では、様々な書籍から考えた有酸素運動が身体に及ぼす生物学的な影響を概観して、 有酸素運動をすると、どのようなメリット、デメリットがあるのかについて説明致します。

有酸素運動とは

そもそも、有酸素運動とは何でしょうか?

有酸素運動とは、最大心拍数80%以下の運動のことであり、80%以上を超えると無酸素運動となります。
これらの二つの違いとしては、筋肉を動かすエネルギー源であるATPの生産方法が異なることが挙げられます。

安静時やゆっくりとした運動をしている時などの酸素が十分にある状態では、ATPを細胞内のミトコンドリアで生産できます。
この生産方式は非常にエネルギー効率が高い方法なのですが、酸素が必要なため、高強度の運動をした時などの酸素が不足した状態では、違う方法でATPを獲得する必要がでてきます。
酸素が不足している状態では、足りない分のATPは細胞質内の解糖系やクレアチンリン酸によって捻出しています。

有酸素運動が身体に及ぼす影響とそのメリットについて

有酸素運動をすると、体にどのような影響がでるのでしょうか?
有酸素運動をすると主に身体に3つの影響が生じます。

①体液の循環が良くなる

まず、運動によって必要酸素量が大きくなるため、交感神経が活発になり心拍数が増加し、同時に血圧もあがります。
これは、副腎髄質からノルアドレナリンやアドレナリンが分泌されるためです。

また、運動によってATPが大量に消費されるため、体温が上昇し、この2つの相乗効果によって血行が良くなります。
実際に、高強度の有酸素運動をした時の心拍出量(1分間に心臓から全身に送り出される血液の量のこと)は安静時の5~6倍程度にまで増加します。

リンパ系は体の免疫に大きな役割を果たすのですが、リンパ系は血液系における心臓のようなポンプ機能を持たないので、それ自体で循環できません。
この循環の役割を担うのが筋肉であり、筋肉が収縮することでリンパが循環します。
そのため、運動することによってリンパ系の循環が促進され、免疫が高まることが期待できます。

②血糖値が下がり、中性脂肪も燃焼される

有酸素運動をすると、交感神経が脂肪細胞にシグナルを出し、脂肪分解酵素であるリパーゼによって中性脂肪の分解が始まり、高強度にすると血中の血糖値が筋肉の細胞に輸送され利用され、肝臓や筋肉にあるグリコーゲンの分解が進みます。
分解された中性脂肪はグリセロールと脂肪酸に分解されますが、この脂肪酸が筋肉の細胞にエネルギー源として利用されます。
そのため、高強度の有酸素運動は太りすぎや血糖値の上昇を防ぐことが期待できます。

また、脂肪を燃焼させるには有酸素運動を20分以上続けないと効果が無いという説がありますが、これは間違いであり、運動開始後も脂肪はエネルギーとして利用されます。
だた、運動開始20分前位の時点では、脂肪よりも糖質が主にエネルギー源として利用されるので、長時間走る方がダイエットには効果的です。
ダイエットをするのにベストな強度としては、最大心拍数の65%位の中程度の有酸素運動をする方が望ましいことが分かっています。
最大心拍数の65%の目安は、軽く息がはずみ、人と話しながらできる程度の強度の運動になります。

③代謝が変わる(体内で生産される物質が変化する)

高強度の有酸素運動をすると、通常と比べて身体に大きな変化をもたらすため、体内で生産される物質(ホルモン・酵素等)が大きく変化します。

例えば、高強度の有酸素運動をすることによって、脳の海馬ではBDNF(脳由来神経栄養因子)が増加します。
BDNFとは、神経細胞の増加や修復、神経伝達の役割を担うシナプスの増加を促すタンパク質であるため、高強度の有酸素運動をすることによって記憶力の増大が見込めます。

また、高強度の有酸素運動をすると快楽物質であるエンドルフィンやカンナビノイドの脳内の分泌量が増えることが分かっています。
うつ病等の改善にも繋がることが分かっており、ストレス解消にも効果的と言えます。

有酸素運動をするデメリット

このように、有酸素運動をすることによって、様々なメリットがあります。
しかし、以下の時間帯に行うと、デメリットが生じてしまいますので、運動は下記以外の時間にするのが望ましいです。

①就寝前

睡眠に関しての記事でも取り上げましたが、寝る前に激しい運動を行うと交感神経が優位になってしまい、睡眠の質が低くなってしまいます。
運動は、寝る3時間以上前に終わらせるのがオススメです。

②空腹時

血糖値が低い状態で運動を行うと、貧血を引き起こしてしまいます。
また、脱水に陥ると血栓ができて血管が詰まりやすくなるため、水分補給はしっかりした方が良いです。

③食後

食後は消化吸収のために、胃腸に血液が集まります。
食後すぐに運動をすると、血液が主に筋肉に回されるようになってしまうため、消化不良に陥ってしまいます。

まとめ

有酸素運動という言葉をよく聞いたことある人も多いと思いますが、どういう運動が有酸素運動で、どういう仕組みになっていて、どういうメリットデメリットがあるかをちゃんと把握している人は多くないと思います。
しっかりと仕組みを知った上で、行うことでより自分の体の健康や、ダイエットにいい効果が生まれると思います。

参考文献

  • 解剖生理学 人体の構造と機能 第3版(志村 二三夫/出版社 : 羊土社; 第3版 (2020/3/2))
  • 運動生理学 (エキスパート管理栄養士養成シリーズ)(山本順一郎/出版社 : 化学同人 (2005/3/1))
  • 疲労と身体運動―スポーツでの勝利も健康の改善も疲労を乗り越えて得られる(宮下充正/出版社 : 杏林書院 (2018/3/1))
  • 心臓によい運動、悪い運動(古川哲史/出版社 : 新潮社 (2020/2/14))