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健康

ホルモンについて|人体におけるホルモンの役割と作用機構

ホルモンについて|人体におけるホルモンの役割と作用機構
2021年3月22日
人体の代謝は様々なホルモンの働きによって絶妙にコントロールされています。 今回の記事ではそもそもホルモンとは何なのか、どのように作用するのかについて解説していきます。

ホルモンとは

ホルモンとはこの細胞同士の連携を伝達する物質のことであり、人体の恒常性を維持するのに重要な役割を担っています。

人には変化する環境を生き延びるためにホメオスタシス(恒常性の維持)という機能が備わっています。
ホメオスタシスとは外部環境及び体内環境に応じて自らの体の代謝を変え体内の状態を常にある一定の範囲に維持する機能のことであり、外部及び体内の情報を元に全身の細胞が密接に連携することで体の代謝を常に変化させ続けています。

神経を経由した細胞の連携システムを神経系、血液などの体液中を介した連携システムを内分泌系と呼び、どちらも情報の伝達にホルモンを活用しています。
ホルモンには遠く離れた場所まで運ばれて作用するものもありますが、合成し分泌した細胞のすぐ隣にある細胞や自分自身に作用することもあり、前者を傍分泌(パラクリン)、後者を自己分泌(オートクリン)と呼びます。
神経系では細胞が前後の細胞同士で作用するため、神経伝達物質による伝達はパラクリンに該当します。

ホルモンは100種類以上も存在し、ほぼ全身の細胞がホルモンを合成・分泌することが分かっています。
(脳では成長ホルモンや副腎皮質刺激ホルモン、皮膚はビタミンD、血管は一酸化窒素、胃はグレリン、腸はセロトニン、膵臓はインシュリン、筋肉はミオスタチン、脂肪はレプチンやアディポネクチンなど)
それぞれのホルモンはそれぞれの細胞から体液中に分泌されて全身を巡り、標的細胞にのみ作用します。これはホルモンはそのホルモンに対応する特定の受容体にしか作用しない基質特異性と呼ばれる性質を持つためです。
体液中を循環する過程で受容体を持たない細胞と接したとしても反応はせず、その受容体を持った特定の細胞(標的細胞)と接したときのみその細胞の生理的な活性を変化させます。

ホルモン濃度は一定の範囲に収まるように人体には負のフィードバック機構が備わっています。
ホルモン濃度が上昇するとそのホルモン自体が視床下部や下垂体に作用し分泌を抑制するように働き、ホルモン濃度が低下するとこの抑制機能が低下しホルモン分泌が上がるようになっています。
女性ホルモンなど正のフィードバック機構を持つものもあります。

ホルモンを化学構造から分類すると、アミノ酸からできるペプチドホルモン(やアミン)とコレステロールからできるステロイドホルモンに分けられます。
ペプチドホルモンは親水性であり疎水性構造である細胞膜を通過することができません。そのためこれらのホルモンは標的細胞表面にある細胞膜受容体(膜貫通型タンパク質)に結合することで作用します。
ステロイドホルモンは脂溶性でかつ分子量が小さいため細胞膜を通過し、細胞内の受容体に結合して作用します。
ペプチドホルモンは細胞で合成された後に貯蓄され必要に応じて分泌されますが、ステロイドホルモンは貯蓄されることなく合成後ただちに分泌されます。

神経系と内分泌系との違い

上記で説明した通り、神経系と内分泌系によって離れた細胞同士が連携しています。
大きな違いとして神経系は電気的な信号(とホルモン)を用いて伝達するため瞬時に標的細胞に作用をもたらせるのに対し、内分泌系は物理的な移動のみ(ホルモンが血液中を移動し標的細胞に到達)で伝達するため、神経系と比べて遅く作用するという違いがあります。

このように聞くと神経系の方が優秀なように聞こえますが、神経系の神経伝達物質(ホルモン)は分泌後すぐに大部分が分解されるため長時間作用することはできません。
内分泌系のホルモンは作用時間が遅い一方で微量(つまり低コスト)でその作用が発揮できるようになっており、持続的に効果を発揮することができます。

そのため内分泌系は低コストでゆっくりとした代謝の調整システムであり、神経系は高コストで素早い代謝の調整システムだと言えます。

ホルモンが作用するまでの具体的な流れ(ストレスを感じた時のホルモンの調整機構)

それでは、ホルモンが合成されてから作用するまでの具体的な反応過程を一つ紹介します。
例えばストレスを感じると脳にある視床下部から副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン(CRH)が分泌され、同じく脳に位置する下垂体に作用します。
下垂体はこの作用により副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)を血中に分泌し、これが血液により副腎皮質へと運ばれます。
副腎皮質はACTHの作用によりコルチゾールを血中に分泌し全身に働きかけます(体の血糖値を上げる等)。
コルチゾールは視床下部及び下垂体に負のフィードバックを与え、CRHやACTHの分泌量を減らすことで体を通常状態に戻します。

参考文献

  • トートラ人体の構造と機能 第5版(著者:桑木 共之, 黒澤 美枝子, 髙橋 研一, 細谷 安彦 / 出版社 : 丸善出版; 第5版 (2019/3/13))
  • 解剖生理学 人体の構造と機能 第3版(著者:志村 二三夫 / 出版社 : 羊土社; 第3版 (2020/3/2))