パフォーマンスに関する情報をお届けします
健康

マインドフルネス認知療法の要素である集中と観察は気分障害(うつ病)にどのような貢献をするのか:3群ランダム化比較試験

マインドフルネス認知療法の要素である集中と観察は気分障害(うつ病)にどのような貢献をするのか:3群ランダム化比較試験
2021年2月21日
今回調査した研究論文はブラウン大学医学部マインドフルネスセンターのウィロビーBブリトン博士らの研究グループが不安感やストレスの低減にどの瞑想が特に効果的なのかを調べたものになります。うつ病を持つ人らをマインドフルネス瞑想、集中瞑想、観察瞑想を行う群に分けて中長期的に観察し、どの瞑想が特にストレスや不安感の低減に効果があるのかを調査しました。 記事の最後にそれぞれの瞑想のやり方の動画も追記していますのでぜひ合わせてご確認ください。

調査した研究論文について

今回調査した研究論文はブラウン大学医学部マインドフルネスセンターのウィロビーBブリトン博士らの研究グループが不安感やストレスの低減にどの瞑想が特に効果的なのかを調べたものになります。
現在、不安感やストレスの低減にマインドフルネス瞑想が非常に効果的であることが分かっており、多くの臨床研究において精神医療の治療薬と同等以上の効果が認められています。
マインドフルネス瞑想は集中瞑想と観察瞑想を組み合わせたものでありますが、実際にどちらの瞑想の要素が特に効果を発揮しているのかについてはまだ明らかにされていません。
そこでウィロビーBブリトン博士らはうつ病を持つ人らをマインドフルネス瞑想、集中瞑想、観察瞑想を行う群に分けて中長期的に観察し、どの瞑想が特にストレスや不安感の低減に効果があるのかを調査しました。
記事の最後にそれぞれの瞑想のやり方の動画も追記していますのでぜひ合わせてご確認ください。

要約

マインドフルネス認知療法(Mindfulness-Based Cognitive Therapy。以下MBCT)には集中瞑想(Focused Attention。以下FA)と観察瞑想(Open Monitoring。以下OM)の要素が組み合わされています。
本研究では、うつ病を持つ人をMBCT、FA、OMを行う群に分けて中長期的に観察することでどの瞑想がストレスや不安感の低減に特に効果があるのかを調査することを目的としました。
研究の結果、FA、OM、およびMBCTはどれもストレス、不安、うつ病の改善に大きく寄与し、その中でも特にFAの効果が高いことが分かりました。MBCTの効果の高さには特にFAの要素が寄与している可能性が示唆されました。

前書き

マインドフルネス認知療法(MBCT)は軽度から重度の感情的ストレス、うつ病、不安に対処するための一般的なアプローチです。
MBCTではまず初めに集中瞑想(FA)を行います。集中瞑想は何らかの対象に意識的に持続的に注意を向ける瞑想法であり、このステップでは自発的な呼吸に集中を向けることで心の静けさを獲得します。
静けさを獲得した状態に達した場合、次に観察瞑想(OM)に移行します。このステップでは浮かんでくる思考や感情をただ観察します。
これらを継続して行うと思考や感情がどのように頭の中で発生するのか、またどのように消え去っていくのかが分かるようになり、最終的にストレスや不安感が減少すると考えられています。
しかし、実際のところMBCTのどちらの要素がストレスや不安感の低減に効果を発揮しているのかについてはまだ明らかにされていません。

目的

この研究の目的はFA、OM、およびそれらの組み合わせ(MBCT)が気分障害(うつ病)に及ぼす短期および長期の影響の違いをランダム化比較試験で評価することである。

方法

軽度から重度のうつ病(及びそれに関連する不安感)を持つ144人(18-65歳のアメリカ人)の参加者を集め、
MBCTのみを行うグループに32人、FAのみを行うグループに36人、OMのみを行うグループに36人を振り分けてそれぞれの瞑想を8週間継続して行って貰った。
指導を行う3時間のクラスを毎週1回開催し、開始から8週間目まで継続した。また、毎週開催されるクラスの間の宿題として1日45分の瞑想を週6日行って貰った。
ストレスや不安、うつ病の程度(重篤度)の測定には、IDS(うつ病の症状を測定するために設計された30項目の臨床医によるインタビュー)およびDASS(不安、うつ病、ストレス症状を評価する42項目の自己申告式質問票)を用いた。
混合効果回帰モデルを使用して治療中、治療完了時(8週間)、および治療完了時から3ヶ月後の時点(20週間)の治療効果について評価した。
全ての分析はSASのソフトウェア(バージョン9.4; SAS Institute、ノースカロライナ州ケアリー)を使用して実施した。
有意水準は全ての統計的検定でp < 0.05(両側)に設定した。

結果

Table.1に参加者の特性を示す。Table.1より、それぞれのグループの特性にばらつきが無いことが確認できた。
figure1.jpg
そのため、以下に示す実験結果の差異は瞑想法の選択の違いによる影響が大きいと言える。

Figure.3は各瞑想法のグループのストレス、不安、うつ病スコアの経時変化をを示している。
figure3.jpg

また、Figure.4は各瞑想法のグループがストレス、不安、うつ病が有意に改善したと言えるラインに達するまでに要した週数を示している。
figure4.jpg

Figure.3より、FA、OM、およびMBCTはどれもストレス、不安、うつ病の改善に大きく寄与することが分かった。
すべての治療の効果は治療後(8週目)の時点ではほぼ同等であったが、それぞれの治療速度および治療後の悪化率に有意な違いが見られた。
Figure.3およびFigure.4から、FAは、治療中のストレス、不安、うつ病の改善率が最も速いことが分かる。
しかし、FAは治療完了時から3ヶ月後の20週目にうつ病が若干悪化していた。(とはいえ、治療前と比べると大きく改善されたままであることが分かる。)
OMは改善速度が最も遅く、20週目における各種項目も若干悪化していた。一方、MBCTには全ての項目で20週目における数値の上昇は見られなかった。
また、Figure.3よりMBCTとOMは治療中の複数の時点でストレス、不安、うつ病の数値が悪化することが確認できた。

結論

8週間に渡るFA、OM、およびMBCTはどれもストレス、不安、うつ病の改善に大きく寄与した。
FAはストレス、不安、うつ病の改善速度が全て最も早かった。
OMはFAやMBCTと比べると不安の減少率が低く全体的な改善速度も遅いため、精神症状の緩和にはFAやMBCTの方が適していると言える。
MBCTの治療の効果として、特にFAの影響が大きいと言える。

それぞれの瞑想法のやり方

参考文献

Cullen B, Eichel K, Lindahl JR, Rahrig H,Kini N, Flahive J, et al. (2021) The contributions of focused attention and open monitoring in mindfulness-based cognitive therapy for affective disturbances: A 3-armed randomized dismantling trial. PLoS ONE 16(1)