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健康

アルコールの摂取が人体におよぼず影響とその効果

アルコールの摂取が人体におよぼず影響とその効果
2021年1月21日
アルコールは結局のところ健康に良いのか、どの位なら飲んでも良いのか分からない人も多いと思います。 今回の記事ではまず初めにアルコールが人体に作用するメカニズムと効果について説明し、健康に良いのかどうか、どの程度飲めば良いのかについて解説していきます。

アルコールが人体に作用するメカニズム

アルコールとはエチルアルコールのことであり、お酒が人体に様々な作用をもたらすのはこの成分の影響です。
アルコールを体内に摂取すると胃から20%、小腸上部から80%が吸収されて肝臓へと運ばれます。
肝臓へと運ばれたアルコールは酵素の働きによってアセトアルデヒド、酢酸へと順次分解されていきます。
この際に酢酸まで分解されなかったアルコールやアセトアルデヒドは肝臓から心臓へと移動し、全身へと拡散していきます。

全身へと拡散されたアルコールとアセトアルデヒドは人体の各場所で様々な作用をもたらします。
例えば、脳に到達したアルコールが脳の神経系に作用することで酔った状態が生じます。
脳の血液系には毒性を持つ物質を脳に入れないための血液脳関門というブロック作用がありますが、アルコールとアセトアルデヒドは例外的にここを通過します。
通過したアルコールは麻酔作用によって脳細胞を麻痺させ、酔った状態を作ります。
酔いの程度は脳細胞へのアルコール浸透度によって決まり、低濃度だと理性を司る大脳新皮質の活動が抑えられることによって感情や本能を司る大脳辺縁系の活動レベルが上がり、気分が高揚します。
中-高濃度になると運動を司る小脳や記憶を司る海馬の活動が抑えられ、運動機能や記憶機能に障害が生じます。
呼吸中枢である延髄にまで麻痺が広がると人体の生理機能を維持できなくなり最悪の場合死に至ります。

また、アセトアルデヒドが循環器系と神経系に作用することで顔が赤くなったり動悸や頭痛がするようになります。
アセトアルデヒドには毛細血管の拡張作用があるため顔を紅潮させます。
さらに、アセトアルデヒドは交感神経に作用し心拍数や血圧を増加させ動悸を生じさせます。
頭痛は血管の拡張と血管から漏れ出た水分が脳の神経を圧迫し炎症を起こすことで生じます。
全身に循環し作用したアルコールやアセトアルデヒドは肝臓に戻ってきた際に再度分解作用を受け、最終的に無害な酢酸、二酸化炭素へと順次分解されて体外に排出されます。

アルコールの摂取のメリット

アルコール摂取のメリットとして、血行が良くなることが挙げられます。
血液が適切に循環することで人体は各場所で良好に代謝を進めることができるため、血行の良さは健康にとってとても大事なファクターになります。
運動不足な人や入浴をしない人は血行が悪くなっている可能性があり、このような人は適度な飲酒をすることで血行不調の緩和が期待できます。
また、特に大きなメリットとしてストレスを緩和する効果が挙げられます。
気分が良くなり嫌なことを忘れられるため、アルコールの摂取により不安感を減らしリラックスすることができます。
他にも、少量の飲酒であれば循環器疾患や認知症の予防にプラスの影響があることが分かっています。

アルコールの摂取のデメリット

アルコール摂取のデメリットとして、アルコールは肝臓病、膵臓病、精神疾患、発がん(特に口腔がん、咽頭がん、食道がん)のリスクファクターになっていることが挙げられます。
発がんを例に挙げると、実はほどほどに飲める人が一番大きなリスクを抱えていると言えます。
理由としては、このタイプの人のアセトアルデヒド分解能力が低いためです。
アルコール自体にも発がん性があるのですが、アルコールの分解代謝物であるアセトアルデヒドにはさらに高い発がん性があります。
アセトアルデヒドの分解能力には個人差が大きく、個人が持つアセトアルデヒド分解酵素(ALDH2)の活性の強さで決まり、遺伝子によって以下の3タイプに明確に分けられます。

  1. 効率よく分解できるNN型(日本人の56%)
  2. NN型と比べて1/16しか分解能力を持っていないND型(日本人の40%)
  3. 分解能力が完全に無いDD型(日本人の4%)

アセトアルデヒドの分解が遅いと長期間体内にアセトアルデヒドが残留してしまい、毒性に長くさらされてしまいます。
そのため、アセトアルデヒドの分解能力が著しく低いND型や全くないDD型の遺伝子を持つ人はアルコールの摂取による発がん性のリスクが高いので注意が必要です。

どの程度飲めばいいのか

厚生労働省の「健康日本21(第二次)の参考資料」では生活習慣病のリスクを高める飲酒量を1日当たりの純アルコール摂取量が男性で40g以上、女性で20g以上と定義しているため、飲酒の際にはこれ以下にすることが望ましいと言えます。
純アルコール20gに相当する酒量はアルコール度数5%のビール500ml缶1本分になります。(500ml×0.05×0.8g/ml(アルコールの比重)=20g)

40-79歳の日本人の男女約11万人を9-11年追跡したコホート研究によると、全く飲酒をしない人よりも男女ともに1日平均23g以下を摂取した人の方が死亡リスクが低くなることが明らかとなっています。
また、23g以上を超えて飲酒をするとそれに比例して死亡リスクが上がることが分かっています。
ただ、飲酒をしない人の中には何らかの健康問題を持つために禁酒をしている人が多い可能性が高いため、必ずしも少量の飲酒が最も健康に良いと結論づけることはできません。
そのため、全く飲まないか、一日当たり23g以下を目安に摂取するのが最も健康に良いと言えると思います。

参考文献