パフォーマンスに関する情報をお届けします
睡眠

寝る姿勢・体勢が睡眠の質に及ぼす影響|論文などの文献調査結果

寝る姿勢・体勢が睡眠の質に及ぼす影響|論文などの文献調査結果
2020年10月28日
寝る姿勢は実は睡眠の質を左右するとされています。それは、寝る姿勢によって血液循環と呼吸のし易さが変わるためです。今回の記事ではその詳しいメカニズムと、うつ伏せや仰向け等、それぞれの寝る姿勢が睡眠の質に及ぼす影響について様々な文献で調べた調査結果を詳しく説明します。

睡眠の質に関して

睡眠の質が高くなるためには、交感神経が抑えられ、副交感神経が優位にすることです。
交感神経は、高くなると代謝が上がり、体温が下がりにくくなるのに加え、覚醒作用があるコルチゾールが分泌されます。
逆に、副交感神経が高くなると血管が拡張され、手足からの放熱が進み、深部体温が低下することで、入眠効果があるメラトニンの分泌が促進されます。

睡眠の質を上げるためには、入眠時及び睡眠時に交感神経の働きを抑え、副交感神経優位の状態を作ることが重要である事がわかります。
(厳密に述べると、レム睡眠中に交感神経が活発になることも重要であるが、本記事のテーマと逸れるため別テーマのときに解説いたします。)

寝る姿勢が交感神経に影響を及ぼす

自分の寝やすい姿勢などがあると思うのですが、実は寝る姿勢によっては交感神経に影響を及ぼし、睡眠の質を下げてしまうことがあります。
ここで重要なのが、寝る姿勢によって血液循環や呼吸のし易さが異なり、それに伴って交感神経の働きの強さが変化するということです。

血液循環と交感神経の関係

血液循環しにくい姿勢だと循環を維持するために心拍数や血圧を高くする必要があり、これらを高くする役割を担うのが交感神経です。
そのため、血液が巡りにくい姿勢だと交感神経が高くなり睡眠の質が低下します。

一例をあげると、座ったまま寝ると、横になった場合と比べて重力に逆らって血液を送る必要が出てくるため、心拍数や血圧は大きくなります。

さらに、身体と地面との接地面は臀部・大腿部がメインとなり、そこに上半身の重みがかかるため、臀部・大腿部の血管に対する圧力が高くなり、より心拍数や血圧が上がってしまいます。
つまり、血液循環の観点から睡眠の質を高めるためには、睡眠時に身体の高低差をできるだけ作らないことと、身体と地面への接点をできるだけ増やし自重の圧力を分散することをおすすめします。

呼吸と交感神経の関係

血液循環のほかにも、呼吸も交感神経の活動に大きく影響します。
それは、呼吸によって心拍数が変動するためです。
通常、呼吸が増えると心拍数が上がり、呼吸が減ると心拍数も減り、安定時の呼吸数と心拍数との比率は大体1:4で落ち着きます。
睡眠時に呼吸がしにくい姿勢をとると、酸素を確保するために心拍数が上がり、交感神経が優位になってしまいます。
呼吸のし難さは大きな起床要因となるため、質の高い睡眠を取るためには肺が圧迫されない姿勢や、顎が上がり十分な気道が確保される姿勢が重要です。

それぞれの寝る姿勢について

寝る姿勢は、大きく分けて以下の5パターンに分けられます。
それぞれのパターンごとに、寝る姿勢が睡眠の質や体に及ぼす影響を見ていきます。

①座ったまま寝る

座ったままの姿勢は、上に記述したように交感神経が低下しにくい寝方なため、睡眠の質を高めたい方にはおすすめしません。
同じような理由での寝方としては、ベッドを傾けて高低差をつけて寝る寝方も当てはまります。

②うつ伏せで寝る

うつ伏せの姿勢は、気道は確保しやすいが、横隔膜や肺、心臓が圧迫されことからおすすめしません。
一部の閉塞性睡眠時無呼吸症の人に効果があるとの報告もありますが、もし効果を試したい方は専門医との相談をしてから行うことをおすすめします。

また、うつ伏せで寝ると眼圧が上がってしまい、緑内障のリスクが増大する可能性や、眼圧が上昇して眼球が固くなると、視神経が圧迫されて傷ついてしまう可能性を指摘する文献がありますので、安全なうつ伏せの仕方をしましょう。

③右側を下にして横向き寝る

右側を下にして横向きの姿勢は、枕の高さやマットレスの硬さなどが体に合っていれば、呼吸がかなり確保しやすい寝方です。
仰向きと比べて体の圧力が側面に偏るため、心臓や大動脈が圧迫されやすくなるが、呼吸が確保しやすいため睡眠の質を高めたい方は、試してみるのもいいと思います。
心理的に安心して寝れる姿勢であり、多くの人がこの寝方をしています。

下部食道括約筋の圧が低下しやすくなる(弛緩しやすくなる)ため、胃が逆流しやすい人や、体の圧力が側面に偏るため、肩が壊れているなどの身体の側面に異常がある場合には避けたほうがいいかもしれません。

④左側を下にして横向きで寝る

左側を下にして横向きの姿勢は、胃の噴門の位置の関係から胃の逆流はしにくいとされています。
その他は③(右側を下にして横向きで寝る)と同様であり、多くの人が行っている姿勢になります。
一つ懸念のあるとすれば、左右の睡眠の向きと片側性尿路結石との関係も指摘されている文献があることです。

⑤仰向きで寝る

仰向けの姿勢は、背骨も安定し、体の圧力が均一にかかるため、おすすめする姿勢になります。
しかし、いびきや閉塞性睡眠時無呼吸症等、呼吸に問題を抱えている人にはおすすめできない姿勢になります。
これは、呼吸が舌が自重で落ち気道を狭めてしまうことと、枕が高い等、寝具が体にあっていなければ気道が塞がりやすいことが要因としてあげられます。

実際に、睡眠時無呼吸症候群の被験者30人を調査した結果で、仰向けに寝ると無呼吸指数が横向きで寝たときの2倍高くなることが示されている文献があります。

まとめ

寝る姿勢によって体にどういう事が起きて、それが睡眠の質に影響するかを調査してみると、いろいろなことがわかりました。
普段、ここまで意識して寝る姿勢を決めている方はいないと思いますが、もし最近睡眠の質が低く感じている方や、いびきなどの悩みがある方で試してみたい姿勢がありましたら、ぜひ参考にしてみてください。

参考文献